2025 01,31 07:09 |
|
× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 |
|
2009 06,08 11:28 |
|
……口直しに病んだ子が一人前欲しかった。
じわじわ壊れてくのがおいしいとか大変残念な趣味を満足させるためだけに突貫工事を敢行したので中途半端なのは仕様です。自己満足度5割増し。 奥歯で噛み砕く。水道水で流し込むと、詰め物の取れた虫歯の治療痕に沁みた。死ぬほど痛い。今から死ぬのだからどのみち問題はないのかもしれないが。 「……なんてね」 睡眠薬一錠で死ねたら世話はない。かさかさの説明書とカルキすら刺激になる不摂生の賜物が昔の記憶と結びついて妙な化学反応を起こしただけだ。必ず守らなければならないらしい用量は一回半錠だから、多少害はあるだろうが、それだけ。二回にいっぺんは半分に割らなければいけないというそもそもが間違っている。こんなものを常用する奴らがそんな面倒を自己なんかにかけるはずがないのに。 蓉子に怒られそうな発言だな、と思う。それ以前にこの挙動が知れたら、彼女は目をつり上げるに違いない。その激昂は優しい。私のためということはつまりは痛いということだ。 ……痛いのは、嫌いだ。 もう飽きた、と言い換えても良い。蓉子はいつも必死で、頑張って頑張って、私に手をかけては前を向かせた。光の差す方が正しいだなんて一体誰が決めたのだろう。そいつが存在するなら、恐らく蓉子みたいな人間だ。尖らせた感情を突き刺される賢者。私の頭ももう大概湧いている。 ふらつく足が陶器の破片を踏み抜いた。鋭い痛み、思わず悲鳴をあげて蹲る。歯を食い縛りながら引き抜くと、私の汚い血が白い皿だったものと床をよごした。一番大きな欠片に向かって手を振ると、きいんと高い音。深夜に近所迷惑だ。アパートの壁はそれなりに薄い。左隣のロック野郎を、たまに殴り殺してやりたくなる。 殺人事件の現場にもならない血痕は、それでも点々とついてため息を誘う。蓉子に怒られるな、ぼんやりと思って、そんなことはどうでも良いんだ、と首を振る。ずきずきとする足の裏が、現実を代表してますとばかりに私に警告を寄越す。放っといてくれ。もう充分なんだ。心配も優しさもお節介も説教も。蓉子で充分だし蓉子のだって迷惑だ。殼越しになんか触らないで。心臓を持っていかないで。 霞みが深まり、蓉子の腕が私の内臓を掴もうとずぶりと沈む、グロテスクな想像までを虚ろにする。転げるようにソファに座った、くず折れた私は酩酊とはとても呼べない悪寒と吐き気に身を捩らせる。蓉子のばか。私を止めることもできないくせに。 天地と明暗がひっくり返る。本当に眠れるものなんだな、と、回り続ける周囲に紛れ歪みながら私は泥に足を取られ口を塞がれぐちゃりと沈んだ。 夢だけはみたくないと強く願った。 PR |
|
コメント |
コメント投稿 |
|
trackback |
トラックバックURL |
忍者ブログ [PR] |