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2011 12,31 23:59 |
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2011 09,17 00:25 |
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吸血鬼パロ。
といいながら蓉子はもう夢魔でいいかな……。蔵出しなのはサイト直送計画実施中だったからです。 はふっ 色々なものを、しかし求めているものとは程遠い無為を、飲み込む音が間近でする。なぜなら私が蓉子を抱きしめたからだ。彼女は抗って暴れて、やがて私に抵抗する余裕もないほど結果的に追い詰められて、今も断続的に喘ぎながら震えている。その扇情にごくりと喉を鳴らしてしまうのは、致し方ないと認めてほしい。最も今現在喉を鳴らして貪りたいのは蓉子の方であることも、私は十二分に理解している。 彼女の理性の糸は強すぎて、心配になる。 いつか蓉子自身が、その糸にずたずたに切り刻まれてしまうのではないかと邪推してしまうから。 はぁ……あ…… 呆けた音がして、理性の塊は私の腕のなかでぐらりと傾いだ。抱きしめている、とはいったものの体勢から言って現実的な表現としては蓉子の表面を腕で覆っている、レベルだったから慌てて力を籠めて引き寄せる。 軽い身体。見た目よりも、私よりも、ずっと。 気を失った人間は重たいというけれど、私は気を失った蓉子しか抱き抱えたことがないんだから比較のしようがない。 まあ蓉子は人間じゃないけど。 霧化できるくらいだから人間よりは軽量なのかなあ。 また少しやつれた肢体(やせたなんて段階はとうに通り越している)、原因の大半はつきまとう私にある。 ……でも、諦めらんないし 私の感情は、まだ蓉子の理性に勝てない。 |
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2011 08,04 01:41 |
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……もう4日? そんなばかな……。
正統派にすれ違い意地の張り合いが書きたかったのだけれどやっぱり終わらなかった。 脳内妄想は爛れ切ると一周して戻ってきます。いつものことです。 ふたりともがまだあの新緑の制服に身を包んでいた頃の話。 まだ硬すぎる上っ面を衝突させては、衝撃を生傷と勘違いしていた頃の話。 そう、今ならお互いに思いっきり恥ずかしがりながら笑い飛ばせる、笑い話だ。 「好きだよ」 「聞き飽きたわ、それ」 蓉子の笑みは完璧にしてさらさらと流れていく。 気のおけない友人同士で完璧な笑顔なんてやりとりされるもんか。 一縷の望みに縋り続ける私は悲しみも寂しさも握り潰して喜びに変換しようとする。 もがく様を静かに見つめる蓉子の視線は途切れることがなく。 私の告白はより軽薄に滑らかになっていく。 無様な話。 自業自得じゃない恋愛関係なんて存在しない。 ふたりきりの薔薇の館、朝早く、吐く息は白いままで目の前の蓉子は紅薔薇さまのままで暖房を入れてくれるなんてやさしさを持ち合わせていやしない。 「朝っぱらから……」 「そう、私に告白するために早起きしたわけじゃないでしょう?」 白薔薇さま? ふたりきりなのにそう続けた蓉子は(紅薔薇さまの仮面を被ったままの、蓉子、は)くすくすと私の軽口を笑う。可笑しげに、おかしなくらい整った笑い声。 それならとにっこり笑い返す私の後ろでこぽりとポットが音を立てる。 どうでもいい、私にはどうでもいいのだけれど蓉子はすっと横をすり抜けてそちらに向かってしまう。 |
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2011 07,07 00:42 |
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惚け話は喫茶店、という固定観念でもあるんだろうか自分。
鉛筆回す佐藤も昔書いた気がするな……。 頼まなくていいの? いーの にこにこと笑いを絶やさずに目の前に座る佐藤さんはくるくるとマドラーを回している。学食では1本だけの箸を行儀悪く動かしていたしレポートを一緒にやったときはシャープペンシルだった。要するに癖なのだろう。どうでもいい。 そんなどうでもいいことを考えてしまうのは思ったより混んでいる店で注文した品がくるのが思ったより遅く、佐藤さんがずっと笑みを浮かべているからだ。適当な愛をばらまくサービススマイルならともかく、本心からにじみ出たとしか表現できない、幸せそうな雰囲気をずっと隣で受け続けるというのはつまり、有り体に言って終わらない惚け話を延々聞かされているのである。これで疲弊しなくてなんだろうか。講義のノートを貸したのはこっちなのに、罰ゲームも真っ青ではないか。 しかしどうでもいい手癖を改める気配のない佐藤さんは、私の感情に気づく風もなく店内を見回しては鼻歌まで歌っている。ああ、モンブランを頼まなくていいっていう意味がわかったわ。だから言わなくていいわよ。 カトーさんこそ、いいの? え? モンブラン ああ、別に ふぅん 気配りではなく、興味からかき回してみただけだろう会話。ふらふらくるくるは気まぐれに続き、恐ろしいことに惚けオーラは止むことなく周囲に春を撒き散らしている。 まあこの喫茶店自体割と花が咲きっぱなしの雰囲気ではある。水野さんはこういうところを好むのかしらね。 |
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2011 05,31 21:50 |
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吸血鬼な蓉子いいよね。
でもたぶん前にも似たようなの書いた。書きかけ。 ――絶対に、嫌よ 蹲って丸まって、私を含む世界の全てを拒絶して。全身を痙攣に近い震えにおかされながら、蓉子は私を含む世界の全てをそうやって守ろうとするのだ。虚ろな瞳。見えはしないけれど。心から見られたくないと思っていると知っているけれど。 でも私は見たい。 右の手で顎を持ち上げると驚きに見開かれるその黒曜。一拍置いて激しく沸き上がる抵抗に、今の私はあっさりと突き飛ばされる。まだ蓉子の力は人智を越えた強大さを維持している。いつもより尖った犬歯が、汗と唾液でぐしゃぐしゃになった口元が、一瞬しか見られなかったからこそ私の脳裏に焼きつけられる。ばか。かすかに涙声。 衰弱しきるまで私に見守らせることを結局は強要している蓉子。荒い息。愛しいから腹立たしい。はやく諦めてしまえ。私を貪ることを。求めることを、理性を飛ばしきるまで許さないなんて、愚の骨頂でしかない。 あいつにはもっと素直だったくせにと私がうっかり口にしてしまう前に、はやく。 |
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2011 05,11 21:09 |
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江志のつづき。
あいかわらず電波。 お姉さまより、ですか 蓉子のことよ? この重苦しい空気と、志摩子に自分。 冷静に見つめられる余裕は皮肉に過ぎない。いっぱいいっぱいな志摩子を、いっそ見守る心地で、私は彼女の心音を聞いている。 ……わかってます ごまかさないでください、と呟く志摩子に、ごまかしてないわ、と囁き返す。陳腐な応酬。くだらないと切って捨てたら、そこでおしまいになるだけの。 この場を見られたら怒られるだろうな、と思う。誰に見られても。私が糾弾され志摩子は同情される。 同じ情などもたないくせに。 ごめんなさい、 もういいです、と言いかけたのを知っている。 謝ることで志摩子が楽になるなら、それでいいのだ。 江利子さまじゃなくてもよかったんです 私でもよかったならいいじゃない なぜこの年頃の子は必然を求めるのだろう。 一年と少し前と、ちょうど二年前を思い返し、性格でも性癖でもなく年齢で彼女たちをカテゴライズして、少しばかりの憐れみを無責任に注ぐ。 たまにはその囲いの中に私自身も入れたくなったのだ。 ああでもこれじゃ聖も入っちゃうわね。 声には出さなかったはずなのに志摩子がぱっと顔をあげた。 |
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2011 05,01 23:41 |
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ので衝動で江志。江蓉や聖蓉に令江の影もするかもしれない。
前振りすっ飛ばしましたが前後足して志摩子の嫉妬ターンも書きたいなあ。ほんのりじんわり、本人も困ってたらおいしい。 世話を焼きたい、が愛情になることって、あると思う? はい、 あると思います なんだか教師と生徒のようだ。 志摩子の属性と真面目さのせいで、牧師と信者にさえ見えるかもしれない。 じゃあその逆もあり得るとは思わない? 先生役も先導者も私はごめんだ。 戯れに肩を抱けば志摩子はこちらをちらりと見て、それから身を預けてくる。 聖が同じことをしたら目視確認はしないだろう。蓉子や他の子ならこんなに至近にはならない。不器用な甘えを、微かな笑顔を持って表されるのはとてもうれしい。 逆、とは? ささやきにも近い声だった。 愛してたけど、ただのだいじ、になったってこと 枝葉の省略はリスキーでたのしい。ぞくぞくする、と言い換えたっていい。 首を動かさずとも志摩子が見える。委ねられた態度にキスはしないそれ以上もしない。それを許されたという前提が作り出す空気がとろりと周囲を停滞させ、懐かしさに少しばかり笑いたくなる。 江利子さまは、紅薔薇さまが大切、なのですね まあ、聖よりはね 重みを帯びる前に返すのは年長者の小狡さだ。 不満げな雰囲気がわずか一瞬にたちのぼって弾け、志摩子は好きにされる権利を行使して非難に替えた。 そういうところは、似ていると思う。 ごく短い期間、同じ空気を共有した令よりも。 鏡というよりは水面で分かたれ反射してるようだと見ている、聖よりも。 |
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2011 04,27 00:39 |
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一足はやい五月病に苛まれてます。ネタとして申告できるうちはまだ大丈夫。そうそう。
先代三つ巴没ネタ。書きかけフォルダ整理してたら「そして」連呼で噴いたので日の目を見せてみる。 そしてわたしはうしなった。 いちたすいちがにになって、ぜろをかければなにもなくなる。そんなやさしい世界を、私は望んで、そして江利子は与えてくれた。今だって恋しい。疼痛はなくならない。強くなるのがこの季節なだけだ。 「泣かないで、よーこ」 「……」 泣いてなんかいないのに聖はそういって、私を抱きしめようとする。口実が泣ければ抱き寄せられもしないなんて、まるであの頃の私ではないか。 冬の聖を笑えないし笑わない。 干からびた有機体に突き刺さる虫ピンは、意外に小さく鈍い光沢も錆び付いていた。 粗悪品ね、と鼻で笑った江利子と、指先で繋がっていた私はばかみたいに愛されていたのだ。 「すきだよ」 けして口に出されたりなんかしなかったけど。 しなかったから。 だからくるしまないで。 聖の声が遠い季節が、今年もまた恐ろしくゆっくりと消費されていく。 |
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2011 04,21 01:49 |
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事後のエゴ。
眠る彼女を見つめる私は、如何様な表情をしているのだろう。 夜目にわずか浮かぶ、蓉子のかんばせ。先刻までのように思うままに操れるわけでもない。無防備と手放しにいうには苦しげな素顔。 なにがだれがそうさせているのか。私でなければいいと願う反面、私以外のものに心を傾げているなんて許し難いと思う自分がいる。 つめたい素肌。巣食う悪夢について尋ねたら蓉子はこたえるのだろうか。いつものように、理路整然と。 そんなのあまりにかわいそうだ。 現を離れてる間くらい、蓉子は楽に生きるべきだ。 私にとらわれないで。 もちろん自明のそれは身勝手な空想の中ですらいえない。 思うだけでも、現実にしみ出してきてしまうかもしれないじゃない。 明日起きたら蓉子はもう朝食を作っているのだろう。ほどけた蓉子を見るために寝つかなかった私を、起こす声が呆れてるのはあと5分がもうさんかいめだからだ。 たまには蓉子を起こしたいな。でも既得権益を手放さずにやるには、眠らないしかないからな。 現の蓉子だってできるなら怒らせたくないし、困らせたくない。夢でまでごめんね。それ、私だよね。 願いをかなえるおまじないのように額に口づけた。 願わくは今の表情が、優しいものでありますように。 |
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2011 04,07 02:06 |
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もっと延々長いんですが脳内妄想が消失する前に書き逃げ。
先代三つ巴というカテゴリでいいんじゃないかと最近思えてきました。 そこに至るまでの事情は割愛するが、あのときの私は栞を失ったとき以上に自失していたと、今なら思う。 落ち着きなく狭い室内をうろつく。時折感じる江利子の視線が平坦に過ぎて、それが私を更にふらつかせる。 腐れ縁に繕う体裁なんてとうに持ち合わせていない。蓉子のいない時間だけが積み重なっていく。 「あんたが笑ってくれないって泣いてたわよ、蓉子」 「……うそぉ」 「ええ、嘘。」 せせら笑う江利子に反省の色など欠片もない。こいつはそういう奴だ。直情型のくせに冷徹で、後悔してるところを見たことがない。心臓は毛むくじゃらに違いない。 ばかばかしい呪詛を吐いたって聞こえるはずもないのだが。音声化したって江利子には届かない気がする。 「でも、泣いてたのは本当」 「え。 ……なんで!?」 心当たりはあり過ぎるくらいあった。痛まない記憶がない。 なんで泣いてたの。なんで江利子は知ってるの。なんで江利子の前で。私は。私の。 「……よーこ、私の前で泣いたこと、ない、のに」 「嘘ね」 被さる断定。はっと顔をあげると揶揄する顔つき。絶対わざとに違いない、艶然とした。 「違う、そっちじゃなくて」 生理的な、私がすがっただけのあれじゃなくて。 足元がぐらぐらする。体感がおぼつかない。揺らぎ続けているのになぜかみっちりと生き埋めになっているようにも感じる。ざらざらの砂に擦られた肌が粟立って、逆円錐の砂地獄が私を呑み込んだ。 なんだこれ。まるで呪い返しだ。毛むくじゃら江利子の。違う、ふらふらしてた私の。それは、蓉子がいないから。だって蓉子が、構ってくれないから。 「だって、何?」 私の中で暴れまわっているこの感情は、これは、喪失感ではない。 だから、まだ。 |
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2011 04,02 19:17 |
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何故虫ピンを膨らませようとしたのか……。
江利子と蓉子。 ……はくぶつかんにいきたい 蓉子が発したことばが意味を為すまでに、しばらくの時間を要した。 「……突然どうしたの」 爪を磨いていた手を止める。左中指がちょうど終わったところ、キリがいいと言えなくもないが全体を並べればとても中途半端。 広げた手の向こう側にみかんが見える。 「うん、」 虫ピンがね、見たいと思って。 考えてみたら、本物を見たことないのよね。 見れる場所って意外と考えつかなくて。 ふつうの昆虫ショップにもあるものなのかしら。 でも実際に使われてるところが見たいのよ。 ぽつぽつと吐き出されることばは懺悔に似て、行きつ戻りつしながら独白を形成した。正直よくわからない。蓉子の意図。矛盾や無駄が多く、ただ思うままをこぼしているだけなのだろうことはわかる。だから余計に。 えりこ、いっしょにいかない? 何故そんなに切羽詰まった表情で私を見つめているのかも。 わからない蓉子に付き合わないという選択をしたことは、これまでに一度もなかった。 |
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2011 04,01 22:00 |
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間女であることに真剣に向き合ってみた。(はずだった。)
NTR属性持ち疑惑が最近私に生じましたが……いやそんなまさか……。 「弱い手ね」 痛々しい手だと思う。傷つくことを厭わない、のではない。傷つくことしか知らないのだ。 昔からこんなに愚かな子だったろうか。振り返ろうとして、思い留まった。 恋愛は人を馬鹿にさせる。 この子も、私も。 知らぬふりをするのにはいい加減倦んでいた。しかし肯定してみせたところで幸せには誰もなれないと来ているのだからやっていられない。とうとう流れ出した涙を拭ってやる。私の末端をかたく握りしめている蓉子自身の手で。 そんなにすがりつかなくとも、私はこうしてあげるというのに。 「ばかね」 そう言われたがってたから、かなえてあげた。与えるだけでいいというのは成程大層楽なものである。 私はこの不毛な停滞に納得しているけれどね。聖への解を私に探す蓉子の不毛が漏らした吐息が何かの罠かと思うくらい甘くて、私は蓉子に引導を渡すのをまた先伸ばしにしてしまう。 長続きするわけがないと思っていた聖と蓉子の同棲生活は、もうすぐ2年になる。 |
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2011 03,29 08:16 |
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最初の一文ってこの間もやったしだいぶ前にもあったネタだなーと思ったので江利子のせいにしました。蓉子さんが。
聖蓉ですが江利子が出てくるのでつまりそういうことです。 縫い止める虫ピンとなる聖の腕は細いのだ。DVに限りなく近いことすらある行為を受ける側の私が、千々と化した意識で思わず心配してしまうほどに。聖は柔らかく、脆い。どこかの一瞬を切り取れば、ストックホルム症候群と見紛うかもしれない。誰に見られるわけでもないのに夢想は具体化し、呻く私は聖の美しさを彩る添え物となって画面に埋まっている。聖の寝室の壁紙。ワンルームなのだから本当は寝室という表現は正しくないが――あれほどじっくり見ている壁はもはや独立した区画を形成している気がする。注視するときは大抵焦らされていて、ぼんやり見詰めるのは果てた後。聖に気取られたくない感情が浮かぶと目を閉じる。痛いのは知られていい、けれどこの哀れみはただの毒だ。 「また、腕のこと考えてるの?」 聖のこと、と言わない江利子を睨みつける。勿論こたえる風もない彼女はひらひらと手を振って、私を嘲笑った。そうかもしれない。そうなのだろう。腕のこと、なんて江利子が形づくるから、私はここに来るとつい聖の細腕について思考してしまうのだ。 江利子が言うなら、そうなのだろう。 「お茶、「要らない」 私が望まないから変わらない空気が、変わってしまうのは耐え難かった。江利子がいっときいなくなるのも。聖に何本突っ込まれても、(品のない言い方が似つかわしいことは不本意である、一応。)毛羽立った縄が血流を滞らせても、私を怯えさせはしない。たとえ包丁を胸元に突きつけられても、いや突き立てられてさえ私は平常でいられる気がする。凪いだ心に踊る、歓喜と憐憫。 私の愛を紐解いた先は畢竟。 「やわい手ね」 これは恋人繋ぎ、と言っただろうか。 炬燵の天板についた江利子の肘に視線を固定する私は、この部屋の何を切り取っているのだろう。 触れ合う指に血が集まる。どうしようもなく泣きたい私に、目頭をおさえることも許そうとしない。 苦し紛れの抵抗に、罵ったのは愛の不在。聖が好きだ。愛している。聖は笑っては、くれないけれど。 伝う滴をぬぐったのはからまったままの私の指先だった。江利子が拭き取った。ねえ江利子、私の身体が私の意思を離れると、安心するの。毒がめぐるの。聖は私に、何をして欲しいのかしら。 「ばかね」 ぽつぽつと涙より少ない吐露が、抽象の両断にされるのを心待ちにしていた私が漏らした吐息は、聖に抱かれるときより甘かった。そう、飴細工の籠にしがみついて、思う。 |
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2011 02,13 00:56 |
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な聖蓉SSです。
ものすごーく久しぶりにモンブラン食べました。10年は大袈裟だけど5年は越えてる。溢れる生クリームに吃驚したんだ……。 気安く手をあげて挨拶に替える学友は、相変わらず軟派だった。 きゃー、という黄色い歓声があがったときには、このまま帰ってやろうかと思ったくらいだ。 「……まあ帰ったところで家に押しかけてくるだけなんでしょうけど」 「んにゃ、何か言った?」 「いいえ?」 ふーんと返す佐藤さんはベンチで行儀悪く足を組み直した。いくら人気のない裏道だからって、(いつもにんきもひとけもない、)まったく誰も来ない保証がないわけがないのに。たとえば、逢い引きしてる女の子たちとか。 まあ佐藤さんのイメージが崩れたところで私は困らないんだけど。 「いい加減講義に出たら?」 「出ても寝るよ」 ふふん、と指を立てられる。くだらなさすぎてため息もでない。 紙コップに入ったコーヒーをずるずるとすすられても私は注意しないし関与しない。 「仕方ない人ね」 え、そこでやめちゃうの? という顔を一瞬した佐藤さんは、すぐにふにゃりと軽い笑顔に戻る。いわゆる、外交用。 ふたりになったとたん浮かびあがってきた表情とは似ても似つかない、綺麗なだけの。 「はい」 「わーい、ありがと!」 わざとらしく贈答。コピーをこちらでしておいたのは保身のためだ。ついうっかり、とか言って私の勉強を脅かす可能性なんかありすぎて地雷ですらない。 着せてあげた借りは喫茶店のケーキセットで手打ちになる。コーヒーとモンブランが自慢の店だ。 「あんまりその表情、しない方がいいわよ」 「んー?」 傾けてた紙コップから口を離すこともせずに、流し目。 籠められた意図がないので色気も何もない。こっちが惚れてでもいない限り。 自然体でいられて悪い気はしない。ただ馬に蹴られるのは御免だ。 「蓉子さん専用にしておきなさい、ってこと」 「えー、蓉子とカトーさんは違うよ」 よーこ喜んでくれるかなあ、と目を細めた佐藤さんは確かにさっきまでとは全然違う表情をしていた。 寒空の下、サボり魔の友人にノートを貸して惚けられるために登校している自分。 「そうね、余計な心配だったわ」 再来週の木曜は晴れるだろうか。 私は佐藤さんと同様に生クリームたっぷりのモンブランは苦手なので、マフィンかマドレーヌでも頼もうと思う。 |
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2011 01,28 01:15 |
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よりも一体何の続きを書いてるのかさえ曖昧になってきました。
聖蓉だとまだ思ってます。 鼻唄で目が覚めた。 そんなことが本当にあるのかと不思議だが、囁きよりやわらかい聖のつくる音は耳に響き頭蓋で震え、気がついたら旋律が変わって穏やかなバラードが紡がれていた。聖には不釣り合いな調べ。本当はとてもよく似合うと思うのだけれど、聖が好んで聞くことはまずない甘いラブソング。ほんの少しの欲を混ぜて。とろける愛を歌う月並みな。私が買ったCDは、最近は聴かれることもなくラックの下段に眠っている。 平凡な人生だと思っている。どこかむずがゆい夢の残滓を追い払って、さっき一瞬だけ合った視線の続きを追いかける。ひどい色をしている足を差し入れたスリッパにするりと落ちた毛布、どちらもこんなに間近にはなかったはずのもの。暖房ではなく湯気によってあたためられた室内に充満するにおいに、実に素直にお腹が鳴った。 |
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2011 01,12 02:36 |
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ひとつき前のネタの続き。過去江蓉な聖蓉、予定。
つきんと胸が痛んだのは、小さな箱からただよう香りが、あのときのハーブティーだと気づいてしまったからだろう。 味そのものを、覚えているわけではない。 覚えていないわけでもないけれど、似たような日の近しい経験や同時に摂取した刺さることば、撫でられた肌。柔らかな刺激はころりと輪になって、私には見分けがつかないのだ。 あの日の味だったかもしれない。その前にもらったお茶でないとも言いきれない。2回使われた茶葉の銘柄と、一致してはいなかったろうか。 曖昧を許される事象について、私の記憶は江利子の好意にただ甘えた。 息を吐く。次に吸ったついでに、もう一度香りを取り込んでみる。もう一度だけ。覆されることがわかりきった釈明。私と江利子の過去など知る由もない贈り主の笑顔が私の心を暖かくさせ、忸怩たる土壌にそっと染み入っていく。小さな箱を抱えもつ私の手の平は湿っている。おいしかったのでおすそわけです。おふたりでどうぞ、と続けたかったのだろう彼女がそうはしなかったのは、先輩の嗜好について随分と知識をたくわえてしまったからだろう。 ああ、もうすぐ聖が帰ってくる。 |
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2010 12,14 01:35 |
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諦めて中途で晒し。続いてるのかどうなのか。
聖蓉、ですが江蓉スメルもほんのりと。 「それで私のところに来たってわけ」 「……ええ」 辛辣な江利子。けれど本当に私が参ってるときは彼女は何も言わないから、無言で慰める手は今は私を嘲る紅茶を淹れているから、だから今の私は大丈夫だと。江利子という物差しで確認して小さく息をつく。安堵に限りなく近いそれを、馬鹿にした江利子は躊躇いなく切って捨てた。 「笑われて安心するなんて、変態ね」 「そうね」 こういうときに私は抵抗することばを吐かない。両者が承知しているから、皮肉の刃は丸まって慰撫に代わる。冷たいほど、ひどいほど楽になれる。どう繕ってもただの事実。寄りかかる私と支えない江利子。原因は聖だけれど、元凶は私。 今日の鎮静剤は、どうやらハーブティーだ。 「楽になるのは蓉子だけなのよ?」 知ってるわ。 お茶うけを手繰り寄せると江利子が鼻で笑う。心配の発露にも見えるその仕草を直視できない私は、一口大のクッキーを少しずつかじっては租借する。江利子とこうしてふたりきりになって、救われるのは私だけ。苦しむのはふたり、いや片方には寂寥か。割に合わない。不公平な天秤の歪みを正す役割は、いつもなら真っ先に引き受けるのに。 ……だって、それは。 |
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2010 11,30 00:09 |
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いつもの江蓉。
インプット側に比重が傾いてる感があるので潜り気味になるやも。アナログ媒体に書いた某ゲームのプレイ日記でも載せようか……。 無防備に明け渡された、その身体は、美しいと思う。 口にすれば蓉子は、江利子だってとか、あの子の方がだとか、濡れた唇を動かしては言うのだけれど。賛美を相対にする意味が私にはわからない。 褒め続ければ居心地が悪そうに身動ぎをする。触れ続ければとけていく。 思いつきというほど不意の衝動ではないけれど、する気告げる気があったわけじゃない。 我慢というまでの荷物でもなく、至極平穏に、その現実を受け入れていたはずの私は。 痕つけていい? びくりと身を震わせた蓉子がこちらを向いて、怯えたように喉を鳴らすのを、とても近いところで見ていた。 ……ごめんなさい なぁに 泣き止んだのは、私の胸が濡れてすっかり冷たくなってから。 ぽんぽんと裸の肌に触れれば、伝わる呼吸の幅は緩やかに大胆に大きくなる。 まるで安堵したかのように。 私、江利子に甘えている そうね でもそれはあなたが謝ることじゃないわ。 頭上から囁きかければまた、震え。 とんとん、とんとん。誰かをあやしたことなんてない私の手は勝手に動く。いとも自然に。悲しみがなぐ。 横たえた不自然を境界にしてしまった私たちは。 えりこ、 わかってるわよ、ごめんなさいね ……あやまらないで それならあなたも謝らないで。 こういう約束が糸になるのだ。傷つく未来を知って、結ぶちいさな繋がり。蓉子が息だけで笑う。 慰めようと唇をつけた。なめらかな素肌、見えない糸でたくさん傷ついた、美しい。 境界の上を滑っていく。 |
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2010 11,21 02:09 |
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こういう地味ーなマゾヒスティックさっていいですよね……というしようもないネタ。
一応前回の聖蓉の続きだったりします。 点々とついた赤い線が、浸した湯の中でぴりぴりと沁みる。線、というほど長くはない。聖の爪が、食い込んだだけの痕。見た目より深く、手を使う作業の度に存在を主張し、幾つかには血が滲んでいたけれど。揉み合った訳ではないし無体を強いられてはいないのだ。さびしいことに。 私が抵抗しないのを、聖は知っている。抵抗して欲しがっている。そのくせ拒絶はされたくなくて、縋る瞳で私の上にのしかかろうとして失敗する。ばかな聖。キスマークをたくさん残せば征服したことになると思っていて、受け入れる私に苛立ちを隠せない矛盾した聖。ばかな私は、あなたに安息をあげられていないことに絶望するの。 追い焚きをする短くはない時間にくだらない追想をする。改める気のない反省会。あの時の私と今の私は途方もなく解離していて、愚かな選択を笑う私は左腕の傷口に触れる。もっともあの時も思考する自分は遠くにいて、見えない傷口を広げて聖と対等になった気でいた。触れる、を越えて摘まんだ肌が、突き刺す刺激で小さく震える。痛い。詰めた息が吐かれた瞬間が心地よくて、私は対象となる爪痕を変えては痛覚を反応させていく。聖よりずっと短い爪を重ねて押し当てた頃にじわり、血の気配。 だいぶあつくなった湯船の中で、伸びをした状態の両腕を並べる。同じようにつかまれたのに左の方がひどい、のはさっき弄ったからだけではない。キスをするときに両手を拘束しあまつさえ体重をかけるのはどうなのか。そもそもあれはキスと呼べる代物なのか。自答しない自問は、気泡となり弾けないままいずこかへ消えていく。首を振ると髪から滴がしたたった。もう出た方がいい。理性に従えるなら、私の全身を覆うこの聖の痕跡は何だろう。 聖に爪を切らせなければならない。冷えた首筋を湯に沈めながら、小言をうっかり忘れていたことを思い出した。 |
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2010 11,16 21:41 |
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久しぶりに痛い話。ほんのり年齢指定?
私たちの間に性差は存在しない。 あるのは体格差と体勢の優劣、どちらも不利な私はけれどその気になれば容易くひっくり返せる。 つまり抵抗しないのは私の意思。薄目を開けても聖とは目が合わない。縛られたかのように動かない手足は、固定されているわけではない。 まったく何をしているのだか。つきかけた溜め息を唾とともに飲み込む。投げ出された手は肩から手先までが冷たい。だって動かすと聖は怒るのだ。抱かれる相手を抱きしめるくらい、いいではないか。 愛情の介在を認めない聖は、抱く、などという言葉は知らぬふりをする。 「……蓉子、犯すよ」 瞳の奥に絶望が見える。 今から聖の方がひどいことをされるかのよう。 間抜けな強姦の宣言も、怯える気配もない醒めた心情も、何もかもが滑稽だった。 目を伏せた聖。私の胸に手を当て、強気を見せようとして震えを伝えてしまう、みっともない聖。 拒絶なんて、抵抗のひとつも要らないほど易しい。 呼吸の延長にある息を漏らす。ひくりと揺れる聖が、ぎゅうと目を瞑って、押し倒した私を貪ろうとする。拒絶も受容も、きっちり同じだけ聖を傷つけることを、私は知っている。 後に得る満足と後悔がどちらも大きくなる選択をした私は、細い女の腕に縫い止められた。 噛むことも出来ないくせに爪だけは立てる弱い少女は、私よりもあたたかい。 |
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