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2009 06,25 11:04 |
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通学電車片道分でできたよ吃驚だ。
どうしようもないくらいバカップルになりました。恥ずかしさのあまり思わず解決編を省略してしまった。まあみなさんが予想した通りですw(えー) 「こないだもショートケーキだった」 窓の外に顔を向けた聖は、バツが悪そうに目線だけをこちらに渡す。喫茶店に吹く生ぬるい風は、外からの熱気に年代物のエアコンが押し負けた結果の産物だ。店自体が骨董品みたいな空間で、趣味の良い(そして恐らくはとても高価な)コーヒーカップに添えられた手が、居心地悪そうにもぞりと動く。上客の好みを知り尽くした店主のおかげで、そもそもスプーンからして付属していないソーサーの端にあたり全体が微かに揺らいだ。つまりは誤魔化しの手段を失った、左手の美しさに嫉妬混じりの感嘆を寄せながら、何も入れずに飲むからよ、とつぶやき未満の声を吐き出す。これは直接的に痛めつけられている彼女の胃腸の代弁だ。他意はないのよ、と抜け駆けた私はもうひとくち生クリームを掬う。シンプルな甘さはけして嫌いじゃない。 「そうね、その前は」 「チョコミントアイス」 それからラズベリーのタルト、レアチーズケーキ。 するすると繋げられる、ここ半年ほどの仲直りの軌跡。月に一度の割合で喧嘩する自分たちも自分たちだとは思うが、いちいち覚えていてそれをあげつらう聖にはこれ見よがしのため息をひとつ。この分だと間違いなく案内された席の位置まで記憶されている。店と時間なんて言わずもがな、だ。採点が可能な自身の塩梅にはきっちり無視をして、変態と罵るはずの口角が上がりかけるのを意思だけで抑える。半分くらいはわざとなのだろう上目遣いの、その長い睫毛に触れたくなった衝動と一緒に、まとめて。 「人を食い意地が張っているように言うの、やめてちょうだい」 「そうは言わないけどさあ、」 甘党だよねえ。 耳元で囁かれたかのような声に、反応しかけ反射的に睨みつける。非難を流してぶすりとパウンドケーキにフォークを突き刺した聖は、大きな口を開けて総量の実に三分の一を一気に放り込んだ。最初からそれで逃げれば良かったのだ。リキュールが入っているという一品をもごもごと頬張る彼女に理不尽な恨み言をひとつ。俗に八つ当たりと呼ぶそれをさっきから次々と量産する私の舌の上で、挟まれたクリームに混ざっていたイチゴの味が溶けていく。 「悪い?」 「いいえー」 むしろ大好き、とか、タラシそのものの台詞がひらりと。流し目のつもりらしいだらしない表情とセットでさえなければもう少し素直に味わっても良いのだけれど。本人の自覚があるのかないのかよくわからない恋人の挙動は、ゆっくりと私たちに前準備をさせる。 「……ごめんなさい」 「こちらこそ、……悪かったわ」 ああまわりから見たらきっと意味不明だろうな、と無意味な優越感を抱きながら華奢なティーカップに手を伸ばす。最後の数センチ分、はもう冷めてしまっているかもしれないけど、かわいた喉を湿らせなければ次のひとことが継げない。残暑厳しい中で選ぶには外れの要素が強いこの店で、一番おいしいのはホットの紅茶だと私はもうずいぶん前に実感を確信に変えた。コーヒーだと主張する向かい側の人物は、同じように薄い陶器に口をつけながら、私への否定を探している。水掛け論が幸せなのはこんなときだけ。だから譲ってあげない。ほんの少し先の未来はわかるけど、素直な表情を見せている今のあなたがとても好きだから。 蓉子、綺麗だけど、が私たちの頭の悪い論戦の端緒になった。 PR |
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