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2009 11,19 00:35 |
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モノクロームの狂乱(聖×蓉子←江利子)
最初は例の如く雰囲気リスペクト品だったものの、続けていくうちいつの間にかいつもの自分の雰囲気に。 なかなかうまくいかないものです。 「あんたなんか、 あんたなんか、言い訳を用意しなきゃ甘えることもできないくせに」 嫌味ったらしく粘りついた女の嫉妬は、その実ひどく子供っぽく部屋に響いた。蓉子を取り合うお子様ふたりが、人形になった彼女の腕をもいでしまう想像をしてしまったのは、きょとんとした聖が視覚に割り込んだからかもしれない。馬鹿馬鹿しい。駄々を捏ねて手に入るものなんて、ガラクタかお下がりばかりなのだ。 「……違うよ」 ふいと冷えた空気に囲まれ、聖は静かに断定した。私の前で泣きわめいたり暴れたりはまさか有り得ないが、嫌悪か自虐か、少なくとも感情を顕にはするだろうと思っていた私の中に密やかな衝撃が広がる。つくりものの陶器に似た指が、肌の赤い部分に押しつけられ両者をたわませる。突きだしたその唇はかさかさで、とてもじゃないが愛らしくなんてなかった。 「だって言い訳がなきゃ、蓉子が、甘えられない」 強い人だから。 苦笑の先には、どころではない。髪も腕も精神も、感情のはじまりから爪の先端まで彼女は水野蓉子に浸かっていた。どろどろのぐちゃぐちゃに癒着していた。 それで良いんだと信じ込んでいる少女は、勝利宣言をあげないまま狭苦しい世界に蹲っていた。疑い深さを向ける先はいつも他人である、幼いから許される潔癖で傲慢な純真さ。あぁきっとその狭隘な吹き溜まりこそが私が望んだ末路なのだ。壊れた玩具。大切にしながら、遊ぶ光景を踏みにじることに何の意味があるだろうか。 取り上げる良識者にはなれず、背を向ける負け犬として引き下がれるほど傷は浅くなく。傍観者に徹するのが最善だったのだと確信してなお私は彼女を傷つける呪詛を吐き出す。聖だけを痛めつけることばを選び突きつける。 恐らく半分は自分のために。 「……もう良い?」 罵詈雑言を尽くした私の息が切れ訪れた静寂はただの刃だった。呼吸と共に継ぐはずだった呪詛を削がれ、私は静かに硬直する。こちらを見る聖の相貌に籠る色は、私より苦かった。焦がしすぎたカラメルが揺れる。 「最低」 「知ってる」 糾弾は遠吠え以外の何物でもない。後から出てきたくせに、ぼろぼろな自分を支えてもらっていただけのくせに。自分では何を為す気もない臆病者が、強がる振りをして彼女の胸に顔を埋める。彼女の肌に隠れた表情なんか知りたくない。予想がついてしまう自分に悪態をつく。 きっと蓉子はその腕を広げるだろう。微笑んで、眉尻を下げて、心まであけわたしてみせるのだろう。溶けるのではなく溶かすのが彼女のやり方で、狡猾で卑怯で救いがたく不器用で。飛べない足場までをパーツに組み込んで注ぐことしかできない。 耳に優しい言い訳を、蕩ける愛を、仮初めの安楽を。 「手綱、握られてますから」 握らせてるくせに、とは、さすがに言わなかった。 PR |
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