2024 05,21 03:11 |
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2010 09,21 02:12 |
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続けようとして迷走。
……こう、たまには停滞だけじゃない江蓉が書きたかったんですが……ですが。 江蓉だったり事後だったりします。 置いていかれた瞳をする蓉子を、ぐしゃぐしゃにかき乱してやりたくなるのは、いつもの衝動だ。 実行したこともある、過敏な蓉子の悲鳴は、閉め切った部屋に心地よく広がって嗚咽になってしまうまですぐ下の熱を持った存在をかわいがった。勝手に向こう側にいったのはあなたのくせに――まあ追い詰めたのもタイミングを図ったのも私だけれど――孤独を主張する表情をあからさまに浮かべられるのはいい気分ではない。やるせない、とでもいうのだろうか。 この私が。 言えば蓉子は謝るのだろうか。 謝ってしまうのだろう。 どちらかが馬鹿だったらそもそも成り立たなかった。 わかって手を出す私はいつも後から嘲られる。キスをすれば蓉子はくすぐったげに笑うから、いつの間にか何も考えずにしていた後戯を、自覚した途端に懲りない破壊衝動が暴れだした。 ねえ、 蓉子の爪が、私の手に刺さる。繋ぎあった両手の意味を、彼女はどう捉えているのか。眠ってしまうか、少なくとも寝たふりはするだろうと思ったのに、引き寄せる仕草。 蓉子に体重を乗せるのは嫌いだ。知ってか知らずか、彼女は巧妙に私の重心をずらす。 PR |
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2010 09,17 03:09 |
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前回の江蓉続き。ちっともえろくないですが一応続きなので閲覧は注意。
聖の弱いところを知っているのは蓉子だから~は公式ですが、個人的妄想として蓉子にとってはそれが江利子で、江利子にとっては令なんですよね。 令は強い子。 無理しなくていいのに、 ……ちがうわ 意地を張った私に、さざなみ。 ゆるい苦笑いとは裏腹の江利子が、夜を重くして私を追い詰める。全部握られているから、とても楽になれる。 ねえ、 すうと消えた色が、江利子の瞳に宿った。 一瞬にして混線した糸が、不安感を掻き立てて吸収する。 私は震えていたかも知れない。 ひきつる快楽は、江利子が丁寧に塗り込んでくれたものだというのに。 好き? ……なんで江利子がそんなことを聞くの。 ルール違反よ。 私たちの間にルールなんてあったとでもいうつもり? だって江利子は。 私の弱い部分を知ってる人が。 掠れた否定は哀願だった。かたちのない壁を崩そうとする江利子に怯えた。指先で押し上げられた圧迫感が胸を詰まらせて空気が塊になる。目は閉じられなかった。 逸らした視界の先を江利子が塞ぐ。 蓉子 囁かれて、感情が消える。食いしばる歯の間から漏れるのは、弾けた衝動の残骸。私は苦しむ選択ばかりしている。 江利子は少し笑った。終わった後、いつも浮かべる笑顔だった。 手を伸ばせば指が絡まる。べたついた指の股に、眉を顰めたところで顔にキスが落ちる。額の時もある、頬の時もある。唇の端が、ぺろりと舐められて微かな吐息がかかる。 ねえ、 寝たふりをすれば、江利子は許してくれるから。 |
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2010 09,13 03:11 |
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どうにも佐藤の影が消えない江蓉。
閲覧注意。続いたら……いいなあ。 内蔵を指でまさぐられる。 手負いの獣のような声を漏らす私に張りついた髪を、江利子の手がそっと払った。辛い? 骨を振動させる囁きは、口づけられたこめかみから伝わってくる。 あなたが望んだのよ。 知ってる、と返す瞳は、嫌味なくらいくっきりと江利子を映す。泣いてしまうほど弱かったなら、きっと彼女は相手にしなかった。ここで泣けるほど強かったなら、江利子に縋りなんてしなかった。 違う、私は江利子に縋ってなんかいない。 弱味につけ込んだくせに。 江利子だって私を利用しているのよ。 それが免罪符になるとでもいうの。 ぐるぐると回る思考に、視界は準じてなんかくれない。見慣れた部屋の天井と、見慣れた親友の合成絵は、想像したことのない現実。私が望んだ。踏み外したとは思わなかった。 遮断しようとする感覚が、目を細めた彼女と私の脳を繋ぐ。 |
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2010 08,11 02:41 |
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不安定蓉子。一応聖蓉。
自分より図体がでかい奴はあまり好きではない。 例外は勿論いるがあの人やあの子は内面が可愛らしいからいいのだ。まだ許せるという免罪符がむしろ野暮ったく無粋になる人格をもしかしたら憧憬に近い意味で好いているかもしれない。それなのに彼女と来たら。甘えることが得意な甘え下手は、矛盾のコマをくるくると回す。私の上で。抉りこんでは苦しむ私を、遠い場所から見つめている。真顔の裏で軽蔑し、心無い笑顔を突きつけて。脆い自衛を突き崩されることをひどく嫌う聖は、私を削って恐怖から逃れようとするのだ。 抱きしめるのはいつも私。体格で勝る聖にしがみつかれても、のしかかられても、私は囲う側にいた。知ってる癖に、と醒めた声がする。じんじんと響くのは、電化製品の作り出す静寂しか周囲に無いからに違いない。 ふらりと聖がどこかへ行ってしまうのはとっくに茶飯事になっていて、でもそれは図々しくも私の日常にはなかなか納まってくれないのだ。 ざわざわとするのは私の勝手。 さみしい味のする食パンを黙々と齧る。同様に冷めたコーヒーに向かって出した手は目測を誤って持ち手を押した。冷蔵庫の牛乳はもちろんもっと冷やされている。足してしまおうか。混ぜて、しまおうか。白と黒が融解していく様を夢想して、逃避になりきれない思考は霧散すると同時に私を突き刺した。知っている癖に。お揃いだったはずのマグカップ。聖はあっさりと割ってしまった。 休日に詰めた予定はどれも火急ではない。 聖の不在を丸ごと胃の中に流し込み、覆ることはない計画がひとつ終わる。存在感までが大きい奴はもっと嫌いよ、と、誰にも届かない毒を吐いた。 |
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2010 07,14 02:01 |
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結構時間おかずに目覚めてしまいましたが、SS打ってたら良い感じに眠気再来したので今からまた寝ます。
江蓉で蓉子→聖だったら、当然こうなるべきなんだよなーと先代小ネタ。もうちょい膨らませてサイト収納するつもりですが、睡魔がいるうちに寝てしまいたいのでこのまま投げ捨てで失礼します。 ざわざわと木々が蠢いた。 ぽつねんと立つ私は江利子に見放された身体を無様に囲う。守るよりは縛るように。 彼女は何にも執着しないと知っていた。期待も理解も無意味だと解っていて、それでもふと振り向いてくれた気まぐれはもう少しは続くのだと信じていた。ひどい傲慢。勝手な幻想。壊されたのは、私の中身だけ。 迷惑をかけていた。不愉快な表情を隠そうともしなかったから、私はかえって図に乗った。聖を笑えない。本当に立派な人は説教などしないのだ。先代の白薔薇さまを見るが良い。今の聖を形作ったのが、果たして誰だったかを、思い返しそして思い知れば良いのだ。 寒い。寒い。まだ秋なのに。制服は冬服で、中庭は囲われて、そして私はひとり。 江利子は行ってしまった。代わりにしてなどいなかったのに。江利子の代わりなんて、誰にも務まるはずがないのに。 ほどかれてしまった鎖の代わりに抱いた腕は、冷たく震えている。自縄自縛の苦しみが、ざわざわと共鳴した。 苦しい。辛い。それなのに。 ぽかりと空いた空洞に、一抹の安堵が滲んでいた。 |
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2010 07,11 01:29 |
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七夕ネタ続き。多分もう続かない。
「私はもう書いてきたの」 「え、どこに?」 「大学で」 「あーそっちかー」 延々続くゆさゆさに蓉子が眉を顰めたところで、ぱたりと止まる。ぽとりと落とす。 すぐ拾われたマジックのキャップが外れて、聖は慌てて優等生になる。 彼女の機嫌降下パターンに合致していた空気を、換気しようともう一度だけ、ばさり。 「え、じゃあ蓉子これには書かないの?」 「聖が書いたら書くわ」 「何書いて来た?」 「内緒」 「えー」 お揃いでふたつ、と主張した聖に、来客が来たらどうするの、と突っ込んだ蓉子。4脚セットの椅子がふたつ、背が少しくっついてもたれている。お揃い、は蓉子の方が本当は望んでたことも。来客なんて来なくていいのに、と聖が思ってることも。知らぬ風情でふたりを乗せる。 「蓉子と幸せになれますように」 ぱっと片方が顔を上げた。 見つめる恋人の笑顔には悪戯の気配。 「って書くとさ、今が幸せじゃないみたいで」 赤くまではならなかった、蓉子に再度笑いかけるまでは確かにお楽しみだけど。 実はちょっと困ってるのも事実。この雰囲気で、世界平和と書いたら拗ねられるかな。 「ずっと、ってつけておけば良いじゃない」 恥ずかしげな声。照れた顔が見たくて思わず身を乗り出した、片方の椅子ががたりと揺れて、 |
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2010 07,09 03:50 |
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旬が過ぎるのもどうかと思うので七夕ネタ投下。
季節物には恒例なバカップルです。 「水野さんは何を書く?」 「え?」 今日がその日だということは勿論知っていたけれど、ここで言われるのは予想外で。 半切りの折り紙を学友に差し出された蓉子は、珍しくも驚きの表情を浮かべた。 「蓉子、笹」 「……おかえりなさい、聖」 まずは挨拶! と怒られるのが目に見えたのか、聖は俊敏な動きで目の前までやってきて蓉子をぎゅうと抱きしめ耳元でただいまと囁く。つくづく気障だ。むしろ気障を超えて頭が痛い。聖のはく息の向こうでかさかさと乾いた音がする。 「持ってて」 これまた手を洗えうがいをしろと言われるのを察知したに違いない足取りで、聖はリビングから消える。最近はちゃんとサボらないようになったとはいえ、あの態度はどうにも自発的とも自然とも言い難い。 ふう。蓉子のついたため息も、かさりと笹を揺らした。 ひょっこりと聖は顔を出す。濡れた手はきっちりとジーンズで拭きながら。 洗面所にはちゃんとタオルがかけてあるのに。 「蓉子、何書く?」 「聖からどうぞ」 にこり、と短冊の見本市。 紐を通す部分がパンチで穴開けされているところから見ても蓉子の手作りだろうな、と聖は見当をつける。下手したらカッターどころか截断機使ってるかもしれない。飾り付けはやっぱりするんだろうなあ短冊いっぱい余りそうだしなあ。 「今年も張り切ってるねえ」 「良いじゃない、年に一度なんだし」 年に一度の行事が年に何度あると思っているのか。 蓉子から笹を取り返して、ゆさゆさと時間稼ぎ。もう片手では油性マジックがくるくると。 「よーこはなにかくのー」 ゆさゆさ、くるくる、すとんの間から、聖がもう一度尋ねる。 この黒マジックはバランスが取りづらくて聖でもよく落とす。蓉子は回せないんじゃないか、なんて実は思ってる聖は、蓉子がふふふと笑うのを間近で見る。 向かい合わせに座るよりは隣が好き。 |
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2010 07,03 02:23 |
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2010 06,23 23:41 |
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いつぞやの続きですが、わからなくても全く問題はないいつものぐだぐだいちゃいちゃ。
いい加減このシチュエーション書きすぎである。でも好きなんだよー。 「笑ってるでしょ」 「うん、笑ってる」 結局許してしまう私を、いつものように抱え込んだ聖は鼻歌まで歌ってる。 「……馬鹿にして」 「違うよ、蓉子が可愛いから」 「聖はそればっかり」 「本音だもん」 「にやけないでよ」 「蓉子が可愛いから仕方ないのです」 「仕方なくないわよ」 眉を寄せた私に眉を下げる。 腹の立つにやけ顔はそのまま。これ以上近づきようがないのに近づいて。 「ほら、機嫌戻して」 ちゅう、とさっきの歯形の上で音がする。 濡れた音はわざと立てただけ、これ以上痕をつけたらどうなるか、聖はちゃんとわかってる。 「いー匂い」 「遅いのよ、」 馬鹿。という悪態は呆気なく飲まれて消えてしまった。 |
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2010 06,20 22:17 |
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2010 06,16 20:54 |
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蔵出し江蓉。
体調崩しました。風邪テンプレの見本市でいっそ笑えます。 「何をしていたの?」 言い方が多少刺々しくなったのに、しまった、と思う。蓉子はこういう感情の揺れにひどく敏感だ。 「……紅葉が、綺麗だったから」 「わざわざ庭に出て? ここからでも見えるじゃない」 少し間を置いて、ゆっくりと返す蓉子はどうやらぼんやりとしていたらしかった。風邪を引きかけの時に似た雰囲気を纏う彼女に、本調子じゃなかったならバレなかったかもしれない、とまず考えてしまった時点で私は随分と利己的だ。それで構わない、と最近開き直るようになった。蓉子をこれ以上慈しみ愛情を注いだところで、蓉子が私にかける好意が増えるわけではない。 「だって、これ」 「……よく持ってきたわね」 「あ、い、いけなかった?」 「そうじゃなくて、崩れやすいでしょうに」 「それは大丈夫」 ふうわりと笑う蓉子は、年相応に見える。よく笑う子だった。すぐに怒って、でもすぐに許してくれる子だった。それが蓉子なりの優しさなのだと気づいたのは最近のことだ。この子は自分のためには怒らないのだ。握りしめた小さな拳を、悔しげに噛み締める唇を、何度陰から見てきたことか。 「このくらいの赤がね、好きなの」 少し恥ずかしそうに告げる蓉子の手に包まれた、ひとひらの落ち葉。私は蓉子が噛んだ唇の赤さの方が好きだ。不意打ちに頬を染める、柔らかな色を本当はとても大切に思っている。 だからたまに意地悪をしたくなるのは虐めっ子の心理ね、とこども染みた支配欲と独占欲を呆れながら俯瞰する。困った顔は羞じらいに似ているし、表情とともにゆるむ唇からは愛してると今にも言われそうな気がする。叶えば予知、叶わなければただの妄想。望まぬ方にずっしりと重みを乗せたままの現実の中で、蓉子が綺麗に笑っている。 思わず引き寄せれば身体を固くした。何もしない、何もされない。それがむしろ不自然で苦痛となるほどの距離に身をおいて、私たちは見つめ合う。 先に目を逸らしたのは私だった。 「押し花にでもしましょうか」 疚しい思いがあるからだなんて、自分が一番よくわかっている。 「……凸凹があるから、割れてしまうわ」 「じゃあ飾っておきましょう」 私の部屋なら、どこでも良いわよ。 吐き出した囁きでも届く静けさ。本当はその艶やかな黒髪にかんざしのように挿してやりたい。当の蓉子に見えない仕打ちは私を心から楽しませるだろう。 忙しい蓉子にははなから無理な注文を。心の中でもてあそんで私は部屋を後にする。障子を開け放つと目に入る中庭で色づく楓は確かに綺麗だった。さっきのあなたほどじゃないわね。呟く私の後ろでは、可愛らしい花が一輪色づいている。 |
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2010 06,15 22:09 |
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2010 05,10 03:18 |
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こんな和風パラレルが書きたいと思ってはや半年……いや、構想入れたら1年弱……。時代物は某方におまかせしておけよ、という脳内ツッコミが凄いんですけどねははは……。
このあと脳内ではばりばりの聖蓉展開を遂げているのですが、今回は江蓉成分含んでますご注意。江利子好きすぎる。 「あんた、だれ」 私にとってはいつも通りの声は、相変わらず、ひどく不機嫌そうに寒空に響いた。 「えっ。 え、と……」 「このお屋敷で働かせて頂いてる者、です」 ばさりと揺れた黒髪は顎の辺りできっちりと切り揃えられ、見るからに出来る使用人然としていた。手に持った竹箒も、剥き出しの手も裸足に草履ばきの格好も、この屋敷の主たちとはとても思えない出で立ちで、そりゃあそうでしょうよと言いたくなる。わざわざ言うことすら勿体無いかもしれない。 「ふぅん」 つまらない答え。 続くのもつまらない相槌。 ああ馬鹿馬鹿しい、何だって私はこんな寒い日に外でこんなことをしているのだか。 「あなたは?」 「知らない」 ろくに名乗りもしない奴に何を言えと言うのだろうか。この屋敷の誰それに用がある、とか? 生憎そんなものあったらとっとと告げているし、それが火急の用だった暁には目の前のこいつは近いうち首になるに違いない。 くだらない想像でうさを晴らしている自分に気づき、は、と吐き捨てる。 「自分のことなのに?」 傾げた首も剥き出しなのに、寒そうな素振りを見せない少女は気分を害した風もない。天然なのか単に面の皮が厚いのか。 これから更に冷え込んで行く季節、この少女はいつまでこの服装でいるのだろうか。 「じゃあ、教えない」 そんな無意味な思考を、少しだけ巡らせた。 「あ……、 ごめんなさい」 「別に」 あと15も若ければ立派にお稚児さんとして通用しそうだ。案外それが真相かもな、と底意地の悪いことを考えた私の気分はますますおかしくなる。どうせ何の目的も目的地もない散歩だったのだ、さっさと退散しよう。それが良い。 「騒がしいわね」 「……あ」 ぴくりと反応した痩身は、いけすかない声の主を振り返りかけ、そのまま惑うように止まった。気にした様子もなく江利子は歩いてくる。 彼女、と私との間に立ち塞がったのに少しばかり違和感を覚えた。主従の逆転? いや、恐らく江利子が誰かを守るような素振りを見せたからだ。 「人の友達に、手を出さないでくれる?」 睨む視線。 ……いつもの、見下す視線、だ。 やっぱり何も変わっちゃないじゃないか。 「……ともだち?」 「っ」 わざわざ「友達」の方に尋ねてやれば、僅かばかりの間、狼狽える。何かに頭を巡らせ、迷っているのはわかるが、はっきりとしたことは結局何も口にしなかった。たいそう躾が行き届いていますこと。 「ふーん、友達、ねえ」 「そーよ、ひとりがお好きなあんたにはわからないでしょうけど」 「あーそうですか、身分差を笠に無理強いしてるようにしか私には見えないけど」 「なんですって?」 「相変わらずいけすかない」 「こっちの台詞よ」 舌打ちと皮肉の応酬。一気に気分が悪くなった。 「……え」 ぽとりと落とされた疑問符が不毛な会話を見事に遮断した。 「知り合い、なの?」 きょとんとした顔がやけに幼く見えて、私は知らず目をこすっていた。そういえば年齢を聞いてない。興味なんかないけど、もしかしたら同い年くらいなのか? 同じように呆気に取られていた江利子が腹を抱えくっくと笑い出すのを見て私は躊躇なく彼女たちに背を向ける。奴の笑い顔なんか見ても楽しくもなんともない。 「行くわよ、蓉子」 「え、あ…っ」 慌てたような声は、最初の印象よりはやはり随分と幼びていた。 どうしてだかちくりと、胸に引っかかった。 |
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2010 04,16 23:12 |
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いちゃいちゃと。
春だから仕方ないよね!w あ、と睨む目元があかいのは、腫れぼったい唇が甘いのは。 「もう、おしまい?」 「そんな、こと、」 抵抗は本気ですれば私なんか易々と退けられるのに。とっくに私を受け入れている、蓉子はそれでも細い腕を張って秩序と形式を求めてもがく。正しいやり方なんて。あり方なんて如何様にでも、と嘯く私に腕を絡めた上でお説教をする。 隙をみせないように頑張るその姿勢はきっと無意識のもので。声で態度で、押して引いて、甘えてねだって拗ねてむくれて、私の道化の果てにふわりとほどける蓉子の笑顔は、苦笑だけれど間違いなく素顔だ。本音は弱味と考え、頼るのは恥ずかしい彼女はひどく不器用な女の子。ふわり、スカートをはためかせ、ふわり、私の腕に落ちてくる。 「……柄じゃないわ」 照れ隠しが耳元にかかるのを見越して、咬んだ柔肌からはシトラスが香った。 |
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2010 04,10 21:17 |
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いつかのグッドオールド(ryの余談がどうのと思ってましたがあまりに関係がなくなりました。
生徒会の下っ端時代は江蓉だと信じてます。令祥系ではなく祐巳と由乃みたくきゃいきゃいしてたに違いない。うん妄想。 納得、した? んーどうしよっかなー 蓉子を抱えて、珈琲が冷めるのを待つ、昼下がり。 蓉子が抱えこんでるマグカップに、もう湯気は立っていないのに、そっと口をつけては顔をしかめる。猫舌の恋人。 ……ふざけないで ふざけてはないよ 嘘つき やわらかな断罪は、しのつく雨の優しさに似ている。実はそろそろ膝の上の重みで両足の感覚が危うくなっているんだけど、強引にこの体勢に持ってきた手前、口に出したら彼女のご機嫌を損ねることは想像に難くない。我慢我慢。こっちが見上げる格好なのも新鮮でいいしね。 蓉子の顔って、勿論身体全体もなんだけど、どこから見ても綺麗だな、と思う。 あ、こら ちょっとばかし疲れたのです 私が休憩を入れるんじゃなかったの いーじゃん、恋人サービス はぁ? マフィンに手を出せば予想通りの反応。私の分はどっちもとっくになくなってる机の上は、私の膝の上で向かい合ってる蓉子には見えない領域。そもそもこんなに甘いお菓子、そんなにたくさん食べられませんよ。 ほら !? あ、むせてる。 んぐ、とか擬音としては可愛らしかったけどねえ。 ジーンズが珈琲にまみれるのは、いくらぬるまってるとはいえ遠慮したい。蓉子に一口分放り込んだその手でマグカップを取り上げると安心したのかごほごほしながら口を覆った。正直痺れた足には拷問である。耐えろ私。 ……ばか 恋人サービス、ね? もうっ 指先にキス、額にキス。 昔話に嫉妬した反動だって気づいてる蓉子は、紅い顔を俯かせたままで私の戯れを受け入れる。私の指ごとマグカップを包み込んで、しかたのないひと、といつもの照れ隠しを呟いた。 |
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2010 03,24 23:57 |
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単独だと性さまだったり最凶のスッポンだったりするのに、まとまるとじゃれてる奴らが可愛いです。
「また雨なの?」 「ご名答」 いかにも鬱陶しげな言葉遣いは、わかりやすく膨れているこどもみたいで可愛く……ないこともない気がする。頑張れば。 やってるのがてるてる坊主を作ったら嬉々として首をふん縛りそうな悪女だったとしても、付き合いと色眼鏡と気力とその他諸々を駆使すれば、なんとか。 「この間聖が来たときも降ったわね。 あなた雨女なんじゃないの?」 「晴れ女として有名な私にそんなまさか。 中等部も高等部も、行事は大抵晴れたじゃないですか」 「あれは私のおかげよ」 「…さいですか」 あえて訂正するなら雨だったのはその前の時だが、江利子のその台詞自体には正直思うところがないわけでもない。あんまり思い出したくない記憶ばかりだけど。 つまり私が不幸になるときは大抵天候が崩れるのだ。ということは、今の状況は。 「江利子って疫病神?」 「なんでそうなるのよ」 思ったことをそのまま口にすれば胡乱を通り越し不審者を見る目がかえってくる。そりゃそうか。いや私は断じて不審者なんかじゃないが。 「……説明するのはめんどいかな」 「言い捨てするつもり?」 自他共に認める作り笑いに取って変わった瞳は、輝いてはいるが如何せんその方向性がロクでもない。牧歌的な気休めを提唱する前に私の方が先に首を絞められそうだ。 まあこれくらいで冷や汗が伝うなんてことはない。良くも悪くも付き合いは長い。幸不幸の不毛な快楽計算をするなら前者をほんの少しばかり勝たせてやるのさえ吝かではない。極めて微量ではあるが。 「うお!?」 素手を飛ばしてステッキ状のプラスチックが飛んできた。なんだそれ。ぱっと見る限り編み棒かなんかか。木の方が使いやすいんじゃないの? 「教えなさい」 舌打ちの次に飛んできたご命令に、素直に応じてやるのは正直癪だ。これでうまくいけば彼女の機嫌が、などという安易な楽観にはあまり意味がないことも既に過去のあれこれから身にしみてしまっている。直球のままじゃむしろ悪化しそうだしな。 しかし本当に女王さまがお似合いなことで、と私には良くわからないドレスっぽいワンピースに身を包んでべたりとベッドに腰をかける江利子に編み棒(推定)を投げ返す。あとは継母とか姑とか。どっちも同じか。 さてどうしますかね、と手近にあったティッシュボックスを引き寄せる。てるてる坊主のためにいきなりたくさん引っ張り出したら、気を逸らしちゃくれないかな、とかね。 「聖」 ……やっぱ無理かな。 |
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2010 03,19 22:30 |
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サイト直送用でしたがしばらくネットに繋がれないという現実……orz3月前半返ってきてー……。
やたら長い江利子ブームです。志摩子とのあれはちょっと待ってください。後日談とか裏話ならほいほい出てくるんですが肝心の本編が中々進んでくれない……。 「……つまらないわね」 ベッドに怠惰に寝そべって、ぼんやりとこちらを眺めたまま江利子は私にそう告げる。気だるげ選手権でもあればぶっちぎりで優勝して絵画になってどこかの応接間にでも飾られるに違いない。私の家には要らないけど。 「まあねえ」 適当に相槌。悪いけど私は今足の爪を切ってて動けない。 しかし恋人と過ごしている昼下がりにつまらないとは一体如何なものか。 「外行ってくれば?」 まあ内容によってはちゃんと付き合ってあげるしさ。 たまにやりだすとんでもないことにはできれば巻き込まれたくはないがそれで江利子の退屈が解消されるなら多少の犠牲には目を瞑ろうとも。 できれば私以外の犠牲であれば良いと願うのは恋人云々以前にきっと人間として正しい判断。 「それも面倒ねえ」 ……歩くのすら、ですかい。 それってもうやれることの選択肢を相当潰してるんじゃ、と呆れて見つめる。可愛らしく見つめ返してなんて勿論くれない(されても困るしむしろ引くが)江利子は相変わらずどっかファンタジーな世界を漂ってて。夢物語の中にいるならそれで良いじゃん、とお手上げのためいき。え、私がいなさげなことに文句なんてつけてませんよ? 「ふてくされちゃって」 「……江利子には言われたくない」 暇だ暇だと態度で示す彼女の機嫌はだけれど別に悪くない。構ってオーラだったらちょっとは可愛げがあるのに、素っ気ないところがいかにも江利子だ。まるで私が甘えたがってるみたいじゃない。あーあなんだかな、と最後のひとつを切り終えて丸まってた身体を伸ばす。 「なんとかしなさいよ」 「……じゃあ、さ」 丸めたティッシュをダストシュートし、立ち上がった勢いのままで江利子に近づく。命令形が似合う不遜な顔に影ができ、更に私しかうつらなくなるくらい、近く。 「それ、もう飽きたわ」 ……情緒の無さも天下一品。 「……江利子ってさあ、本当、」 このやろ、と小突くといかにも嫌そうに眉を潜められた。それ以上やったら殴るわよ、って、理不尽極まりない台詞。どうすりゃ良いのよ、と思わず正解を求めたくなる。神様マリア様なんてごめんだから、蓉子や志摩子あたりに。 「……まあ、いいわ」 昼寝にしましょうか。 それはふて寝って言うんじゃないの? ってくらいやる気のない眠る体勢で江利子は私のベッドに乗っている。脇でしばらく突っ立っているともう一度眉が寄ってそれからぽんぽんとシーツが叩かれた。江利子の隣、ちょうどぎりぎりひとり分くらい空けられた空間。 「……」 セックスは駄目で添い寝なら良い、その価値基準がいまいち分からないまま私は江利子をまたいで越して腰を下ろして。隣に潜り込むとこっちを向かれる、柔らかい髪がすれすれに落ちる。 「……おやすみ」 す、と音もなく詰め寄られ眼前に江利子のどアップがうつったと思ったら唇に微かな感触。すぐに呆気なく離れ、それから目を閉じた江利子はどうやら本当に眠ってしまうらしい。ぱ、と指で押さえた箇所が熱くて、私は恨みがましく目の前の恋人を見る。 「……ったく」 おやすみなんて、返してやらない。 しばらくは、こいつの寝顔を独占して見続けてやろうと思った。 |
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2010 02,24 11:16 |
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おまけ3……だったはずが何か続きを書かなきゃいけない雰囲気になってきたな……。
ヤンデレ話とかにもそろそろカタをつけたいんだけどな。傑作の構想より完結した凡作の方がよほど価値があると頭ではわかっています。 (グッドオールドディズ2/乃志) 唐突に降ってくる穏やかな言葉に、さざめいた現実とやらは少しずつ変化していってしまうのだ。まだまだ新米姉妹かつ恋人の私たちの間では。 「今度、出掛けてくるわね」 「え?」 気をつけていないとふたりともつい部屋に籠りがちになってしまうから、となにやらよくわからないアドバイスを祐巳さまたちから受けて、近所の緑化道路をのんびりと散歩していた。この選択からが既にして普通の高校生のデートから逸脱しているだろうが、まあ、出掛ける先は宗教建築ばかり、な私たちの普通からもずれていたし、おふたりの希望には添えていると思う。要は私たちが何もしなかったせいで祐巳さまが由乃さまに八つ当たりされる事態を回避すれば良いのである。それが呆れて脱力された結果の産物であろうと何も問題はない。 「なんか曖昧な申し出だね」 「実際曖昧なのよ、まだ日時も決まってないの」 困ったように笑ってみせる志摩子さんは、一方でとても嬉しそうだった。志摩子さんが感情豊かになったのか、私の志摩子さんへの理解力が向上したのか、はわからないけれど最近私たちはまたちょっとだけ歩み寄りを深めたと思う。でもこんな顔は初めて見る。 「なんで私に言うの?」 「乃梨子には言っておいた方が良いと思ったから」 すくん、と胸に一本立った何かを考えないようにして、だけど素直に尋ねてみる。間違いなく嫉妬に分類されるはずの対抗心は、事前にあっさりと伝えられていることで得られる優越と相まって、なんだかおかしなことになっている。たとえば私がこんな風になってその申し出を承諾せざるを得ないとか、そういうことを志摩子さんは計算する人じゃない。後ろ暗い打算は志摩子さんには似合わない。 「答えになってないよ、志摩子さん」 「そうね、ごめんなさい」 ……このごめんなさいは、志摩子さんには珍しいくらい浅瀬だなあ。 最も、最後の審判の結果を告げるかのように沈鬱に謝られるよりはよっぽどマシだ。志摩子さんなら想像出来かねないわけじゃないところが怖い。そんな深刻な謝罪をさせてしまう原因には思い当たりがないのは、きっと、幸せなことなのだろう。そう自分を納得させた私を数歩分置き去りにして、志摩子さんは立ち止まった。 「昔、とてもお世話になった人」 桜色の唇からこぼれ出たその名前は、すぐには志摩子さんとの繋がりが思い出せないくらい縁遠い(と私は思っていた)人で。やっぱり曖昧なままの説明に、尋ねたいことはいっぱいあったけれど私はとても頑張ってそれらの疑問を全部飲み込んだ。 一度も誤魔化す素振りを見せなかった志摩子さんの頬は、うっすらとはにかむように上気していて、その可愛らしい表情のままで、終わったら皆話してあげる、と約束してくれたのだから。 |
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2010 02,21 13:36 |
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お絵かきBBSのラフ絵の隣に添えてある寸劇くらいのをちまちま続けるのが好きです。続きものとはとてもいえませんが。30話くらい続けたらそれなりになるのかな(笑)。
(グッドオールドディズおまけ2/聖蓉) よーこ、そろそろ休憩……ってあれ、電話? あ、ええ、江利子から ぱたんと折った音がパソコンの駆動音とまざる。部屋にたちのぼる珈琲の香りも、焼き菓子の香ばしさを吸い込んで私の平静を手助けした。 へぇ、何話してたの? 何……なのかしらね なにそれ 説明しようのないことを、無理に伝えようとすればそれは捏造になってしまう。事実から外れたことを告げるのは嫌いだし聖相手なら尚更だ。歯の間に挟まったものは、不可解にぐにりと曲がり、弾む。 電話番号の確認、かしら 胡散くさいなあ 江利子はそう言ってたもの あ、嘘なんだ しまった、と誘導尋問に引っかかった自分に臍をかむ。今は親友以上でも以下でもないって言ってるじゃない。あなたに後ろめたいようなことは何もないわよ。 ねえ、何してたの? 湯気の立つマグカップを乗り越え身を乗り出して来た聖に、上体を反らすことで逃げようとしたものの、咄嗟の反応は児戯にも満たない。わざと落とした低い声、嫉妬以外の炎も混ざる瞳での追求から、逃れられるなどお互いに思っていやしない。 ふ、と鼻腔をくすぐる甘い香りに、記憶の糸がほどけたことにして。私は昔語りを始める。 |
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2010 02,18 05:33 |
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あからさまな当て馬ーな話はあまり好きではないはずなのに江蓉バッドエンドばかり書いてるのはなんだかんだで最後は山辺さんか令とくっつくって思ってるからだろうな。聖江はくっつかないことが既に存在意義のひとつな気がしているのでまた別です。そろそろ誰か他人様の江蓉が読みたい。
(グッドオールドディズおまけ1/江利子+蓉子) ……もしもし よかった、蓉子ね 当たり前じゃない ああごめんなさい、こっちの話 ……はあ どうせ見えないのだから何をしていても大丈夫、が嘘なのは自明だ。ぴしっと背筋を伸ばしているのだろう蓉子は恐らくあの椅子に座っている。取り組んでいるのは時期柄レポートか試験勉強か。 じゃあね え? 何か用事があったんじゃないの? もう済んだから 番号の確認? まあそんなとこ ……そう 信じてないことは知っている。でも蓉子はこれ以上は突っ込んでこない。今の私はそれなりに幸せだからだ。浮かれてると称したって良い。 それじゃごきげんよう ええ、ごきげんよう お互いもうその挨拶は生活の圏外にあるだろうに。自然と交わされた懐かしい響きに、緩んだ口元から漏れた吐息は彼女には届かなかっただろう。 |
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